最近妙に増えつつある「自分の価値がわかっていない人」。特にイラスト界隈で増えつつあります。
相場をガン無視した自分勝手な値段設定でクライアントから笑われてスルーされている人ですね。最近本当に増えています。
今回はそんな人に向けて、自分に見合ったコミッションの値段のつけ方について解説させていただきます。
今回紹介する値段の決め方
今回紹介するのは以前紹介した自分が欲しい金額から逆算して値段をつける方法ではございません。
※詳細はこちら。
今回紹介するのは、相場を考慮した自分の身の丈にあった値段のつけ方です。
検索画面を見ながら検討して値段を決めるものなので、実際にもらえる金額は(手数料や税金で減額されて)さらに下がります。ですが、実際に買う人が見て決めるのは検索画面です。検索画面に並んでいる他の人の商品と比較して誰にするかを決めています。
今回するお話は相場や他の人がよく出している価格を踏まえ、どれくらいの価格で出すべきか?を検討しよう、というお話です。
前提・有償依頼と技量についての話
イラストの値段が決まるのは「技量」だと思っている方が非常に多いです。
これ実は間違いで、技量は「あって当たり前」です。
技量はデジタルツールの発達であまり変わらなくなりつつあるので、「これくらいの技量ならこの価格!」とは言えなくなってきています。
漫画できますとかアニメーションできますとか別の強みがある人は強いですが、イラストしか描けません!の場合は技量ではほぼ差がつかないことは覚えておきましょう。むしろ画力があってはじめてスタートラインに立てると思ってください。
「画力」ってどれくらい必要なんだよ!
そう思う方がいらっしゃると思いますが、よくココナラで売られている二次元イラストの場合ひとつの目安になるのはイラスト投稿サイト「pixiv」のランキングページにのっているイラストです。
このページにのったことがあるかどうかではありません。このページにのっているイラストと並べられても見劣りしないかです。コミッションの商品一覧を見るとわかりますが、このレベルのイラストがずらずらと並んでいます。それらと並んで見劣りしないイラストをサンプルに設定しなければ他の人に流れます。
このレベルが描けない場合はまだ有償依頼を始めるスタートラインに立っていません。まずは技量を上げましょう。(特に線画がきれいでも塗りがヘタクソだったり古くさかったりで損している人はめちゃくちゃ多いです。)
実際コミッションの底辺クラスの方でもこれくらいのイラストを描いている方はいらっしゃいます。このレベルを描けなければ他の方に負けますので、最低でもこれくらいは必要だと思ってください。
「え、猫戸さんそれ求めすぎじゃない?」と思うかもしれませんが、ここでひとつ残酷な現実をお伝えします。
2024年現在、AIを使うとこのレベルのイラストを出力できるようになっています。特に個人観賞目的のイラストはAIにどんどん置き換わっているのが現実です。「このレベルならAIでいいわ」と思われたら終了ですね。なので最低でもAIと同じくらいかそれ以上の画力は必要です。
相場とイラストの価値が決まるポイントについて
まず、コミッションの相場についてはこちらをご覧ください。
クライアントから見た「大まかな相場」の目安ですが、だいたいこれくらいが目安相場になります。
こちらの相場は猫戸すずがココナラ・SKIMA・つなぐの各種コミッションサイトにおけるイラスト出品を5桁くらい見てまとめたものです。
ざっくり「これくらいの価格で出している人が多いよ」のラインです。
イラストの価値が決まるのは「実績」と「拡散力」です。
pixivを見ているとよくわかりますが、めちゃくちゃ神絵師でも売れていない人はいますよね。このことからもイラストの価値は技量以外のところで決まっているというのがよくわかると思います。
「拡散力」はイラストレーターさんで使っている人が多いので、青い鳥だったTwitterと呼ばれていたXのフォロワー数を目安にしていますが、移住した人は他のSNSでも構いません。
イラストを発注する場合、個人使用目的でなければ「このイラストレーターさんが描きました!」と宣伝してもらうことで自分の知名度も上げようとしていることが多いです。実績公開をOKにしている場合はたいていは「ついでにこっちのコンテンツのことも宣伝してくださいね」という意味が込められています。
イラストの価格は「相場料金+宣伝力」です。その宣伝力の基準になるのが「企業依頼実績」だったり「フォロワー数」だったりするわけです。
たとえどれだけイラストが上手であっても、SNSフォロワー数があまりにも少なかったりでイラストレーターに拡散力がない場合は宣伝にならないのでクライアントが得られる価値が減る=値段が下がります。
最近はフォロワーを買ったり、ある企業の採用でフォロワーが多いアカウントの人は選考免除といったことにもなっています。このケースは拡散力を買われています。
イラストレーターも同じです。クライアントがイラストを発注するとき、あなたのイラストだけではなくあなたの拡散力も合わせて買っています。
ド素人絵師が初めて描いたイラストです!よりも超人気絵師が描きました!の方が箔がつきますよね。そういうことです。
売れていない人ほど値段を釣り上げる、逆に売れなくなるからやめよう
コミッションあるあるですが、売れていない人であればあるほど高額な依頼料を要求してきます。どうやらこれ、コミッション界隈だけではないみたいです。
看板で有名な「きぬた歯科」の院長のインタビューの一部を引用させていただきます。
羅田院長:以前、きぬた歯科がYouTube動画を撮影した際、効果音を入れたく、いくつかの音楽をチョイスしました。正直、それほど売れていない曲です。それなりの金額を提示しましたが、アーティスト側がかなり高額なギャラを要求してきました。売れた曲ならいざしらず、YouTubeの再生により、アーティストの宣伝にもなるという発想がまるでない。結局、コチラがやめました。
きぬた歯科のインタビューより(出典はリンク先の記事)
ラジオもやっていますが、あまり売れていないアイドルグループに出演依頼をした際、やはりそこそこ高額な出演料を要求されたこともあります。それもやめました。
結局、アーティストやアイドルにとって、世に出るチャンスを失った事になりますよね。そういうことなんですよ。欲をかいた結果です。そのアイドルグループはその後、解散しました。お互いWin Winの関係を築けないから、伸びない。仕事もお金も。
このインタビューで言われているのはライセンス料とかそっちの話になりますが、コミッション界隈でも同じです。
イラストレーターさん、本当に皆さんそうなんです。売れていない人であればあるほど、クライアントのことを全く考えていません。「どうすれば自分の実績になるか」「どうすれば自分の宣伝になるか」「どうすれば少しでも多くお金をもらえるか」……自分が得られるメリットのことばっかりです。それではクライアントが不満をためて他の人に逃げます。
イラストが高く売れない!と嘆いている人が値段を上げるためにまずするべきことは有名になるための活動です。フォロワーを増やすためにタグをやる・自分から交流するなど、あなたに興味を持ってくれている人を増やす努力をしてください。
基準はアイコンイラストの価格
上記を踏まえた上で、基準と決め方を説明させていただきます。
イラストの場合、基準になるのは最も安い金額となる「アイコンイラスト」です。
ここでは、「商用利用なし・人物1人・背景描写と小道具なし」の基本料金価格と考えます。
コミッションで実績がない場合はどれだけフォロワー数が多くても2000円あたりです。まずは「依頼されたイラストをきちんと指定通りに書いて納品した」という実績を積むのが優先。
最低限の実績が積めたら3000円+拡散力に応じてインセンティブと考えるとわかりやすいです。
基本の金額は3000円として、ここに実績と拡散力による価値が加わります。
3000+(Xのフォロワー数)/10
がだいたいの目安になります。
例として、Xのフォロワー数1000人の場合、
「3000+1000/10」=3100円
が目安です。フォロワー数が1万人であれば
「3000+10000/10」=4000円
です。
ここに実績として実績非公開の企業依頼の経験があればワンランク、「企業依頼で○○描きました」みたいな公開できる企業依頼実績がある場合はツーランク上がります。だいたいそれぞれで1000円、2000円アップすると考えるとわかりやすいです。
フォロワー1万人だったとして、実績非公開の企業依頼の経験があれば「5000円」、名前が出せる企業依頼がある人の場合は「6000円」が目安になります。
名前を出して宣伝されている実績を持っているイラストレーターの方が上です。
「実績非公開の場合」企業依頼であってもワンランク下がるのは企業から「メインイラストレーターとして名前を出しても宣伝にならない」と判断されているからです。たいていは名前を出して宣伝になる人に流れています。
企業案件だったとしても、イラストレーターの名前を出して宣伝になるならどんどん名前を出します。カードゲームのカードイラストやFGOとかFEHあたりがわかりやすい例です。そのへんのイラストはどのイラストにも「イラストレーターだれそれ」と記載されていますよね。
今算出した価格がだいたいのあなたのアイコンイラストの価格の目安となります。
全身イラストであればアイコンイラストの価格の2.5~3倍が目安です。
腰までのイラストの場合は2倍くらいが目安ですが、アイコンイラストの価格が同じくらいの人の価格設定を参考にしてみてもいいでしょう。
Live2Dパーツ分け立ち絵は自分がどこまで担当できるかを踏まえて決めるべきものなので、ここでは割愛します。自分がどこまでやれるのかを踏まえてアイコンイラストの価格も考えながら決めましょう。競合の価格が非常に参考になりますが、どこまでをやっていくらなのか、を必ず確認するようにしましょう。Live2Dのモデリングまでできる人は結構希少だったりします。
まとめ
身の丈にあわない値段をつけていると、勝手に期待されて「ごめんなさいできませんでした!」となる確率が大幅に上昇します。同じ価格帯でもっとランクが上の人にクライアントがどんどん流れますから、逆に首を絞める結果になります。
いきなり主役クラスを狙おうとしないでください。コミッションで募集されているものはほとんどが脇役クラスです。特に企業案件の実績非公開の依頼は「指定されたものが描けるのであれば、ぶっちゃけ誰でもいい」類の仕事であるケースが多めです。
(このあたりを理解していなくて自分勝手に描いて指定を守れなくて怒られるのはコミッションあるある。)
主役クラスを狙えるのはそこそこの実績とネームバリューがある人だけ。企業依頼の主役クラスともなるとフォロワー6桁クラスかすでに大きめの企業依頼実績があるような人か、コネがある人(開発者の学生時代の同級生だった人か企業時代に同じ企業にいた人)しかいません。
コネがない主役クラスの人はだいたい脇役の企業依頼を評価されてお仕事ゲットしてます。
もう一度自分に見合った値段設定ができているか?をコミッションの競合を見ながら確認してみましょう!
片方だけがメリットのある仕事は勝手に消滅します。もったいないのでやめましょう!