依頼優先度の決め方の具体例を紹介します!
仮想の依頼を3つ受けているものとして、その段取りを一度試しに組んでみましょう。
![猫戸すず](https://nekodosuzu.com/images/nekodo1.png)
ここでひとつ、例題を出します。
文章題だと思って、解いてみて下さい。
※納品までの作業期間が長くなりやすいイラストレーターを想定しています。
ではここでひとつ、問題です
あなたは以下のように商品ページに記載していた。
※必要な部分のみ抜粋している。
<基本料金>
・膝から上までのイラスト 1万5000円
・全身立ち絵 2万円
・Live2Dパーツ分け立ち絵 10万円
<オプション>
・背景描写込み 5000円
イラストレーターであるあなたは①②③の依頼を引き受けている。
①Live2Dパーツ分けイラスト 10万円
(キャラクターデザイン費込みで値札をつけていて、オプションは発生していない)
②既存VTuberのひざから上+背景つきのクリスマスイラスト1枚 2万円
(「背景つき」のオプションが発生している)
③IRIAM用全身立ち絵1枚 3万円
(キャラクターデザインがないため、オプションに記載していないが「キャラクターデザイン費」として追加で1万円をいただいている)
現在のそれぞれの依頼の進捗は以下である。
①:10月1日に依頼され、12月31日が納期である。
キャラクターデザイン・ラフ画まで終了。次は仕上げまで行ったものを提出する。あと1日作業を行えば提出できる状態である。仕上げの提出予定日は指定していない。
②:11月1日に依頼され、12月20日が納期である。当初は11月30日が納期であった。引き受け時に「多忙」を理由に着手時期を11月20日に変更し、納期を想定よりものばしてもらっており了承を得た上で依頼をしてもらった。
現在ラフ画まで終了しており、クライアントからOKが出て次は仕上げまで行ったものを提出する。仕上げ作業は全く行っておらず、仕上げの提出予定日は指定していない。
③:11月1日に依頼され、12月31日が納期である。
キャラクターデザインの締め切りは11月20日であったが、間に合わなかったため相手に催促され結局11月30日に提出した。
ラフ画の提出目安として「12月10日」を指定しているが、ラフ画は作業中でありまだ完成していない。
ラフ画の次は仕上げまで行ったものを提出する。
昨日は先週からずっと続けて作業をしている①の人の仕上げの続きをやった。
現在12月9日の朝。あなたは何をやろうか予定を立てている。
この場合、①②③の依頼を全て終わらせるには、どの順番でやるのが正解か。
![猫戸すず](https://nekodosuzu.com/images/nekodo1.png)
このパターンですが、きちんと段取りを組めば全ての依頼を納期までに余裕をもって終わらせることが可能です。
ダメな例
まずはダメな例から紹介。
- 解答112月9日
①の人の仕上げを完成させた。
- 解答212月10日
①の人に完成品を提出した。
③の人から送信された「納期であるにも関わらずラフ画の納品がない」旨のメッセージを未読スルーしてしまった。
- 解答312月13日
③の人から怒りのメッセージが入った。納期をオーバーしてしまっているため、謝罪をして③の人の作業を優先して進めることに。
- 解答412月16日
③の人にラフ画を提出した。
- 解答512月19日
①の人とのやり取りが終了し、納品が完了した。
- 解答612月20日
そうこうしているうちに②の人の納期が来てしまった。②の人にはまだラフ画しか提出できておらず、仕上げは全く進んでいない。しかも②の人の依頼は「クリスマスイラスト」であり公開予定日に間に合わなくなりラフ画まで進んでいたにも関わらずクリエイター都合で全額キャンセルになった。
今やっている①の依頼を全部終わらせてから次に取り掛かりたくて他の依頼の納期をオーバーしてしまったケースです。結局②の依頼がキャンセルとなり、③の依頼も間に合うかわからない状態になってしまっています。
②の人のキャンセルを認めない例がたまに見られますが、この場合は「クリエイターの納期オーバー」が原因ですのでクリエイターの責任です。全額キャンセルを認めないと最悪訴訟になりますので、ご注意を。
オッケーな例
ダメな解答例を見たところで、模範解答例を見ていきます。
![すず](https://nekodosuzu.com/images/suzu13.png)
このまま①の仕上げをあと1日行えば①は提出できる状態になるが……?
模範解答例はこんな感じです。
- 解答112月9日
①の作業を一時中断し、③の人のラフ画を完成させた。
- 解答212月10日
③の人にラフ画を提出した。
- 解答312月11日~13日
②の人の仕上げ作業を行った。
- 解答412月13日
②の人に仕上げイラストを提出した。
- 解答512月14日~15日
③の仕上げ作業を行った。
- 解答612月16日
③の人に仕上げイラストを提出した。
- 解答712月17日
②の人から修正依頼があり、修正を行った。
- 解答812月18日
②の人に修正を提出し、OKが出た。
- 解答912月19日
③の人から修正依頼があり、修正を行った。
- 解答1012月20日
②の人の納品を完了させた。(納期に間に合った!)
- 解答1112月21日
③の人に修正を提出し、OKが出た。
- 解答1212月22日
寝かせていた①の人の作業の続きを行った。
- 解答1312月23日
③の人の納品を完了させた。(納期よりも早く納品できた!)
- 解答1412月24日
①の人に仕上げイラストを提出した。
- 解答1512月27日
①の人から修正依頼があり、修正を行った。
- 解答1612月29日
①の人に修正を提出し、OKが出た。
- 解答1712月31日
①の人の納品を完了させた。(納期に間に合った!)
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こちらが模範解答例となります。
仕上げから修正が発生した際に納期オーバーすることなく対応できるように、一週間前に仕上げを提出しています。
模範解答例の解説
先日依頼優先度は点数をつけたらいい、という話をさせていただきました。
こちらの例に出している基準で今回の依頼3つを点数付けすると、こうなります。
①の人は「キャラクターデザイン20点」のみのため
「20点」です。
②の人は「公開日がすでに決まっている依頼10点、依頼前の納期変更打診10点」が発生しているため
「20点」です。
③の人は「キャラクターデザイン20点、想定外オプション10点、提示予定オーバー20点」が発生しているため
20+(10+20)*2=「80点」です。
この通り、①と②の人が同じくらいで③の人の優先度が圧倒的に高いことがわかります。
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③の人の点数が高いということは、それだけ次に失敗したら怒られる可能性が高いということです。
この状況を踏まえて模範解答例のポイントを解説していきます。上記の記事にある内容と一部重複がありますが、読んでない人もわかるようにした結果ですので「同じ内容書いてるじゃん!」とか言わないでください。
ポイント1
ポイント1は「③の人には怒られる可能性が高いため、最優先で対応!」です。
総額が高い上にVTuberのママになれる①の人を優先したくなるかと思います。
ですが、③はクリエイター都合で追加料金を打診しており、了承をくれたクライアントです。
あなたが記載していない追加料金を要求したことで「クライアントの期待値を当初の想定よりも上げてしまっています」。
このパターンの場合一番丁寧に対応しないと怒られるのは③の人です!
なぜなら「想定以上の金額を支払ってくれている上に一度迷惑をかけているから」です。
①の人は高額になっていますが依頼内容が依頼内容ですので、高額になることはある程度覚悟のうえで依頼しています。
①と③では納期が同日ですが、③の人にはギリギリに100%のものを提出すると怒られる可能性がありますので③の人を優先して作業を行っています。
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①の人は最初から高額になることは想定した上で依頼している上にまだ納期に余裕がありますので、ここでは少し待ってもらいます。
先にラフ画提出目安としてクライアントに日程を提示している③の人の依頼を進め、予定日通りに提出します。
ポイント2
ポイント2は「ラフ画提出が終わったら絶対に遅れられない②の依頼に着手!」です。
次に、②の人の依頼を完成させ「納期の1週間前」にクライアントに提出します。あなたがすでに一度納期延長を打診している上にスケジュールの都合上これ以上の延長は絶対にできないため、仕上げからの修正発生を見越して納期より1週間早く納品します。
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②の人の依頼はクリスマスイラストですからギリギリに提出して修正が発生した場合間に合わなくなる可能性があります!そのため、早めに提出することで納期オーバーのリスクを下げています。これでも結構ギリギリですが……。
このように、次に優先度が高いのは②の人です。
ポイント3
ポイント3は「先に③の人の依頼を終わらせ、満足度アップを狙う!」です。
これで②の人の作業はほぼ終了となりますので、次に寝かせていた③の人の作業を終わらせます。
③の人はあなたの都合で想定予算より1.5倍の値段を支払ってくれています。「あなたに対し1.5倍の期待値がかかっている」状態です。
③の人にはクライアントの想像の150%のものを提出しないと満足してくれないと思っていいでしょう。当然、納期オーバーや手抜きなどは言語道断です。1回目は許してくれるかもしれませんが、ほかの人よりは許されない・2回目があればキャンセルになるとみていいでしょう。
①と③の最終納期は同日ですが、上述の理由によりここでは③の作業を先に終わらせるものとして予定を組んでいます。
③の人の作業が終了し次第、寝かせていた①の人の仕上げに取り掛かります。
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ここでは「クライアントの想定より早く納品する」ことでクライアントの満足度を上げています。
もちろん早く提出してもクライアントが見て手抜きがわかるようなものであった場合は怒りのリテイクが飛んできますのでお気をつけて。
おわりに
繰り返しになりますが、①の依頼は高額かつVTuberのママになれますので、優先したい気持ちもわかります。ですが、ここで忘れてはいけないことがひとつあります。
②と③の人が①の人の犠牲になっているということです!
①の人の依頼が来ていることは外からは見えません。②と③の人にとっては「自分の依頼こそがすべて」なのです。
特に今回のケースだとどちらも活動用の依頼ですので、その依頼には活動者としての命がかかっています。特にこれから活動者になる人の場合、イラストレーターが文字通りそのキャラクターを「殺して」しまうこともあります。今回のケースだと③の人が該当します。
イラストレーターは「その活動者の命を預かっている」ものとして取り掛かる必要がある、それだけ責任の重い仕事を受けているということを忘れないでください。